2009/04/08
金澤流儀 春の段 桜流儀
その昔兼好法師が徒然草に「桜は咲き始めた頃から雨風が続いて・・心忙しく散り終わってしまう」と書き記しているけど、春の嵐がまず吹かない金澤では桜は楽しめる期間がとても長い。
藩政期にお殿様が城から桜霞を観るために植えた桜、兼六園に集められた様々な桜(ここにしかないモノも含め約40種類)軍都として栄えた頃、戦勝記念として植えられた桜、その後もいろんな機会に植えられた桜達・・・そして東西に三本の台地が指を伸ばす地形の程よい高低差、日照差も加わり、細やかな「桜ぷろぐらむ」がゆっくりゆっくり進行します。
まずは細部に宿る金澤の桜。
常緑樹の葉の上にも花片・・・風がないコトがよくお分かりになると思います。
マンホールも綺麗に花化粧。
ある意味これも「花見」まあ「桜風情」とでも言いましょうか・・・
金澤の伝統工芸はこういう何気ない景色からも日々新たな影響を受けているのだと思います。
笠舞のこの公園もささやかな桜所。
ほぼ満開になっても、花片はあまり落ちていません。
そして無風の夜、糠粉の様な、柔らかい柔らかい雨が音もなく降って花々をしっとり濡らして・・・徐々に徐々に枝垂れてくる桜を眺める楽しみも金澤流。
※方向は逆ですが同じ公園の同じ桜、かなり枝が枝垂れているのがお分かりになるでしょうか。
(拡大してご覧ください)
兼六園、上坂口を降りて桜ヶ丘口方面を眺める。兼六坂との間に咲くバラエティーに富んだ桜達。ここも道はキレイなままです。
下は石川橋(兼六園と金沢城の※搦め手、石川門を繋ぐ橋)
から眺める桜揃え。(※石川門をなんとなく表門だと勘違いされている方も多いでしょうが、こちらは裏門・・・お庭に繋がっている門ですしね・・)
金澤での桜の醍醐味の一つ、遠近に散らばって配置された桜風景。ここでの毎年の桜始終を眺めるのは幸せ。ちょっとだけお殿様気分。
夜になると石垣の下、その昔はお堀だった沈床園はお花見の特等席になります。
兼六園も夜桜見物でにぎわい
辺り一帯が幸せな桜のムードに包まれます。
この時期、もちろんこの向こうにも手前にもあちらこちらに満開の桜の園は展開しています。
桜名所の一つ、犀川桜橋〜大橋間の桜の下を通勤、通学路として愛用している人達も沢山いらっしゃいます。一年中こんな道を毎日通うなんて・・・金澤に暮らす日々の何気ない贅沢の一つです。花片はほとんど真っ直ぐ下に落ちて・・・吹き寄せられるコトもなく、綺麗な絨毯を出現させます。
男川犀川、女川浅野川、二つの川原にももちろん素敵な絨毯が敷き詰められ・・・まだまだ桜の宴が楽しめます。
観ている人達も桜景色に溶け込んで・・・
二つの川がなぜ男女に例えられるのか・・・それぞれに魅力的な川・・それぞれに金澤らしい・・・違いがこの写真からもなんとなくお分かりになると思います。
そろそろ地面に落ちている花片の方が多くなる頃。こんな場所も桜色にキレイに塗り替えられます。こちらは浅野川(左)
石垣の僅かな段差にも花片が積もってピンクのラインが・・・こちらは犀川(右)
笠舞の公園もすっかり桜化粧。ちょっと幻想的な雰囲気になってきました。(ぜひ拡大してご覧下さい)
十日後くらいにはこんな風に・・・今度は萼から下が、辺り一面に散らばります。これも趣のある桜の余韻。
それからさらに約7日・・・八重桜の花が散るころに兼六園菊桜が丁度見頃を迎え・・・一ヶ月近くにわたって続いた「桜ぷろぐらむ」はフィナーレを迎えます。 もう五月。ツツジ、菖蒲、杜若、そして竹の子の季節に金澤は入っていきます。
兼好法師は半ば逆説的に「桜の花は盛りだけを賞美するものだろうか・・散り萎れ残る庭も美しい」と書き記しましたが・・・
金澤では、桜はゆっくりゆっくり移り変わり様々な賞美に値する景色をつくり・・・とりわけ意識せずとも長い間に渡って私達を楽しませてくれます。
いらっしゃる方は何度でも、可能ならある程度滞在されて、この・・・金澤ならではの桜風姿をお楽しみ下さい。
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